「美桜……っ俺寂しいよ……っ」


それからしばらく日が経ったある日。
南朋は玄関で私に向き合ってそんなことを口にしている。
そう、今日から南朋は二泊三日の修学旅行で。


「…行ってらっしゃい、南朋」


あれからは抵抗なく自然と口角を上げられるようになって。
私も寂しい気持ちはあるけど、そんなことより楽しんでほしいという気持ちが大きいから。
微笑んで南朋にそう言うと


「…俺だめだ。こんな可愛い美桜を置いていけない」

「……行ってらっしゃい」


南朋は頭を抱えてそう言うから、私はもう一度行ってらっしゃいの挨拶をする。
すると、南朋は顔を上げて嬉しそうに頬を染めて笑った。


「俺、早く帰ってくるからね」

「うん」

「だから帰ってきたら、また笑ってね」

「うん」


南朋は私が笑うようになったことを、自分のことのように、いや自分のこと以上に喜んでくれた。
そう言ってくる南朋にまた笑うと、やっぱり行くのやめる!とかまた言い出すから。
少し呆れて強引に送り出した。