せこいあんたを待ちぼうけ





「じゃあな,知己。あんたの用意したお酒,1本だけ貰って帰るから」



キッと睨み付けて,ドアノブに手をかける。

あたしの手提げの鞄が肩を滑り,あたしは鍵を開けようとした。



「待って!」



手を取られ,引き留められる。

あたしははっと目を見開いたけど,またすっと元に戻した。

そんなんで許されると思ったらあかん。



「……なんや,先に出たいって?」



この一言だって,言い過ぎな訳ないんや。



「……あんたさ,ほんまにひどいことしてるって,分かっとるん?」

「分かっ……とる。ほんまごめん。璃空を傷つけるつもりとは,違かったんや」

「なら10秒だけ聞いてあげるさかい,ちゃんと1から説明しい」



口をぎゅっと,閉じる音。

その次は,私のお腹に強く手が回る。



「なんのつもり。あと5秒やけな」