「――大吉、その涙は悔し涙でいいのね?」


「あったりまえじゃねぇかよおおぉぉ……っ」



 夏休み中の高校生、ファミレスで号泣。


 一体何事なのか。


 実家に戻ったことを二人に報告したら、ファミレスに呼び出されてこの有り様だ。


 大ちゃんがテーブルに作った水溜まりをしぃちゃんが拭いていく。


 拭いては溜まり拭いては溜まり。


 まるで餅つきみたいな連携だった。



「あなた以外全員喜んでるわよ……」

「こんな結果で喜んでるんじゃねええぇぇぇ……っ!!」



 というのも。この度ウチの高校野球部は、甲子園でベスト4入りを果たしたのだ。


 四校ある内の、四番目なんだけど。


 去年の成績から考えると大躍進なのに、大ちゃんは優勝以外眼中になくて泣いている。



「緋織っ! せっかくお前という最強の特訓マシーンがあったのに不甲斐なくてごめんなああぁぁ……!」

「わ、私もすごいと思うんだけどな……?」



 わんわん泣き止まない大ちゃん。向上心がすごいね。


 この調子だと、来年優勝してもおかしくないかも!