奈落の果てで、笑った君を。





お湯の温度だけじゃない温かさが足に伝わってくる。


長いまつ毛、サラサラした髪の毛。

目も、鼻も、唇も、全体的にシュッとしてるのが尚晴。



「どっちが好き…は、わかんない…、ごめんください」



大きいも小さいもない。

ぜんぶぜんぶ、そうやって“どちらか”を作る感覚がよく分からない。


首の角度と一緒に声も落ちてしまうと、逆に目を少し開いた尚晴が焦ったように見上げてくる。



「すまない、悪かった」


「…ううん。わたしが答えられないから尚晴は怒ってるんだもん」


「違う、そうではない。…俺の、ただの私情をぶつけてしまっただけだ」


「シジョ?」


「…そこは気にしなくていい。あと、“ごめんください”は少し違うぞ」



ふっと、いつもの尚晴が戻ってきた。

それだけで心が軽くなる。



「尚晴はわたしのことすき?」


「……動くな。足が洗えない」


「あれ?どうしてそんなに真っ赤にさせてるの?熱ある?」


「っ、うるさいぞ。じっとしていろ」


「はあい。…ふふっ」



もうとっくに泥は落ちてるよ?

とは、言わないでおいた。