奈落の果てで、笑った君を。





脱衣場に入って、尚晴はまず端に置いてあった足置き台を手にする。


そこにわたしを座らせると、風呂場へ向かって桶にお湯を溜めてから再び登場。

目の前にしゃがんだかと思えば、わたしの足にそっと触れた。



「自分で洗えるよ?」


「言うことを聞いてろ」


「…うん」



やっぱり怒っているのかもしれない。

わたしは尚晴をすごく怒らせてしまったのかもしれない。


ちゃぷん、ちゃぷん。

ふたりだけの場所に、大きく響く水音。



「尚晴、わたしのこときらい?」


「…なぜだ」


「いつも目を逸らすし、寝るときもびょうぶ挟むし…」


「なら、お前は藤堂 平助のことが好きなのか」


「…へっ?」



どういうわけかへーすけの話題に変わった。

わたしはいま尚晴のことを話しているのに、話したかったのに、ほらまた逸らす。



「へーすけは優しいよ。だから尚晴も仲良くしてほしい」


「…好きか、と聞いたんだ俺は」


「うん。すき。でも尚晴のこともすき!」


「……だったら俺と藤堂、どちらのほうが好きなんだ」