「尚晴?どこいくの?お部屋?」
お部屋だ。
わたしと尚晴のお部屋。
自分で歩けるよ?と言ってみても、どこまでも無を貫く尚晴。
そして部屋にたどり着いたものの、私を下ろすことなく、手放したのは風車のほう。
「尚晴!どこ行くの!」
それからまた部屋を出てしまうから、ジタバタと動けば諦めたのか小さく回答が聞こえる。
「風呂だ」
「おふろ?どうして?」
「足を洗う。せっかく入ったのにまた汚れてしまっただろう」
雪が溶けてしまった中庭の地面は、ぐっしゃりと柔らかかった。
あ、そういうことだったんだ…。
尚晴がわたしを抱えてくれているのは、お部屋を汚さないため。
ということは屯所内の床も、泥の足跡だらけかもしれない。
「…ごめんなさい」
許してくれたかは分からないけれど。
腕のなか、できるかぎり頭も下げると、くいっと引き寄せられたような気がした。



