奈落の果てで、笑った君を。





「いま見ないの?」


「…ああ」


「どうして?」


「……お前との時間を、大切にしたい」



じっと合わせるわたしとは反対に、そっぽを向かれてしまう。

どんな顔をしているんだろう?と気になりながらも、自然と笑顔がこぼれた。



「あれ…?風車がない…」



そんな今日、いつも眠る前はくるくると遊んでいた風車が見当たらない。

枕元に置いて眠って、朝になってまた遊ぶのが好きだった。


へーすけが買ってくれた大切な風車。



「ないっ、どうしてっ」


「風で飛ばされたか」


「えっ、そんな…!」



確かにいつも日中は部屋の隅に無造作に置いてあったとしても。

雑に扱っていたわけではなかった。



「探してくる…!」


「っ、朱花!」



ダッ!と、部屋を飛び出す。


風で飛ばされたならまずは中庭だ。

草履すら履かず、わたしは夢中になって裸足で降りた。