奈落の果てで、笑った君を。





どこか、ほんわりと、微かに和らいでいた。



「悪いね桂くん。僕はみんなの朝食を作らないと」


「ノブちゃん!今日のご飯はなーに?」


「一昨日みんなでついたお餅でお雑煮でも作ろうかな」


「おもち!伸びるやつ!」



季節の行事など、この屯所で行ったことは初めてだった。

それぞれがそれぞれ。


たとえ同じ志の下に集っていたとしても、個人の領域にはぜったい踏み入れることはできなかったというのに。


ここは武家に生まれた身分ある剣士の集まり。

むしろそれ以上近づいたなら殺す───そんなものを誰もが持っていたはずが。


餅つきを提案したのが与頭ともなれば尚更。



「では、私と組みましょうか早乃助」


「うえっ、佐々木さん正気なの?」


「“うえ”はひどいんじゃないかい」


「あっ、うそうそ!うそですって。こりゃあ勝ちは貰いましたねえ」



ほら、ここでも。

見廻組の顔であり、この組織を表す佐々木 只三郎でさえ、朱花の笑顔には敵わないということだ。


この無邪気さにはどんなに巧みな剣でさえも引けを取るだろう。