奈落の果てで、笑った君を。

尚晴side




「きゃーーーっ!!わーーっ!」



しとしと、しんしん。

夢のなかで深い深い雪が降っていて、たまったものではないと悪態をつきたくなった。


目覚めた真冬の朝、屏風を挟んだ反対側の温もりが妙に寂しく感じて。

俺はガバッと布団から飛び起きる───が。



「またどこに行ったんだ…」



気づかない俺も俺だ。

すぐに襦袢から袴に着替え、腰にふたつの脇差しを身につけたところで。



「わあっ!つめたいっ、ふわふわしてる…!」


「うるさいんですけどーー。眠れないんですけどーーー」


「あっ、桂!」


「俺きのう夜だったんですよ巡察がー。疲れてんだよお兄さんはーー。こんな朝っぱらから雪ごときで騒いでどーすんのさ」



刀は必要ないかと、置き台に戻す。

夢のなかではうんざりしていたはずの雪も、あの声ひとつで嬉しいものに変わるなど。


口元を緩めながら襖を開けると、白銀の世界を思う存分堪能するは椿の花。