奈落の果てで、笑った君を。





「ええ、もちろん君の気持ちは手に取るように伝わっているよ。
けれど、この世にどれだけ親に捨てられ、食べる物も着る物もない人間がいることか分かっていますか」


「………」


「その全員を救う気ですか?尚晴」



触らぬ神に祟りなし───、

ぽつり、付け足すように安らぎいっぱいに囁かれた。



「…確かにそれは…そのとおりです」


「こういうことは親切だと思われがちだけれど、本当はいかに自己満足と偽善が含まれているか。それはかえってその子を傷つけるだけですよ」



傷ついてないよ?

わたしのことを言っているんだよね…?



「すまない、少し言い過ぎてしまったね。ところで話は変わるけれど、今回江戸に戻った際。どうにも興味深い話を聞いたんだ」


「興味深い…話、ですか」


「ああ。尚晴だけには話しておこうと思ってね。どうにも徳川幕府には、かれこれ長いあいだ牢に───、……なにをしているのかな」


「っ!おい朱花、」



堅苦しい顔をしていた只三郎のお膝。

ちょこんと乗ってしまったわたしは、気になるものを見つけて手を伸ばした。