奈落の果てで、笑った君を。





「怪我をしていて熱があったみたいですね。もう治ったのかい?」


「…完全ではありませんので、もうしばらくは様子を見たほうが良いかと」



お口は、閉じる。
なにを思っても決して言わないこと。

それは尚晴からコソッと耳打ちされた約束だった。



「親御さんも心配しているでしょう。早めに帰してあげるのがいちばん良いのではないかな、尚晴」


「…この娘は、とても恵まれない環境に育っていたようなのです。なので…、ですので、」


「尚晴よ。同情というものは、決して正しい行いではありませんよ」



なにものにも表現できない、なにか。


穏やかに、優しく、柔らかく、太陽のような投げかけをしているように見えるけれど。

実は、とてつもなく非道で冷たい、凍るような太陽。


言うなればそんな感じだ。



「……同情などではありません」



それだけは、と。

ここにきて低く変わった尚晴の声。