奈落の果てで、笑った君を。





お留守にしているのかな。
それとも違う場所に移動しちゃったり…?

だったらもう少しこの近辺の道を覚えてから来よう。

きっとそのときでも遅くはない……はず。



「尚晴、怒ってる?」


「…ああ。まだお前は病み上がりなんだ」


「ごめん…ください」


「……でも、よかった」


「え?わ…っ!」



急に立ち止まられてしまい、腕を引かれながらも背中にぶつかる。

振り返った尚晴は、心から安心しきっている顔をしていた。



「…よかった」



するり、と。

頬をなめらかに滑る手のひら。



「えへへ。あのね、これ風車!」


「…あいつに買ってもらったのか」


「うんっ!ふーってするの!見ててね?」



ふーーっ!!

ふわっ、くるくるくる───…。



「ほら!尚晴もやってみて!」


「……わかった」



少しだけ腰を下げられ、目線が合わさった。

なだやかに揺れた前髪と、伏せられた切れ長の瞳。


ふうっと、短めのひとつ。