奈落の果てで、笑った君を。





「尚晴!」


「へえ、こいつが尚晴ね」



ぐいっと、腕を引かれる。

ふわりと鼻をかすめた尚晴にしかない温かな香り。



「…藤堂 平助か。こいつに何の用だ」


「なんの用だって、迷子になってたから道案内してやったんだけど?」



そうなのか?と、わたしに聞いてくる。

だから迷わず首をコクンと落とした。



「もしオレが逆の立場だったら、まず“ありがとう”って言うね。それが礼儀ってもんだろ?なあ、見廻組のお武家さん」


「…行くぞ朱花」


「わっ!尚晴!へーすけは良い人だよ!」



息を吹きかけたわけでもないのに、くるくる回った風車。



「へーすけ!ありがと!」



風車と一緒に手を振ると、背中を向けた彼も適当に返してくれる。


ピリピリしていた空気。

やっぱりへーすけが言っていたように、彼らは嫌い合っているのだと。



「まって!橋の下にいるおじいさんに会いにきたの…!」


「橋の下には誰もいなかった」


「えっ、そうなの…?」