奈落の果てで、笑った君を。





「わりと心配してたんだよオレ!もしかしたらどっかで野垂れ死んでねーかなってさ。だけど、やっぱ生きてたわ!」


「おせわになりました」


「……お前の言葉の使い方、なんかちょっとおかしいんだよな」



それからずいぶんと気分が良くなったらしく、へーすけの足運びは跳ねるように軽かった。

あっ、そうだ。
へーすけに教えてあげなくちゃ。



「あのね、わたしの名前は忽那 朱花っていうの」


「お。名無しの権兵衛は卒業したのか!…あすか、いい名前じゃん?」



誰かに紹介したことは初めて。

そして、いい名前だと言われたことも。


わたしだけじゃなく名付けてくれた尚晴のことまで褒めてもらえたような気がして、嫌な気はしなかった。



「だとしてもあれだぞ。オレと話したことは見廻組の連中には伏せろよ」


「どうして?」


「どうしてもこうしても。お前らはオレたちのことが嫌いだし、オレたちだってお前らのことは嫌いだ」


「どうして?」


「…だからどうしてもこうしてもなんだって」