奈落の果てで、笑った君を。

尚晴side




暗い場所で、冷たく硬い食事を出されていた。

布団で眠ったことはなく、着物すら着せてはもらえなかった。

火事が起こった日、檻から逃げてきた───と。


そんな壮絶すぎる日常を口に出した本人は何とも笑顔なものだから。


これは何かの物語を聞かせられているのか?と、俺はつい疑ってしまった。

けれどそうではないことなど昨夜の出会いがすべてだ。



「…火事…、」



もとは江戸にいたと。

とくに江戸はしょっちゅう火事に見舞われてはいるが、直近のものだと大きな火災がひとつあった。


江戸城の大火災───、


もちろんそれは俺の耳にも届いていて、復興援助のために見廻組の隊士が向かったほどだった。

たまたま俺は任務に出ていたから、この京に残っていたが。



「いや…そんなはずはない」



もしその城から逃げて来たと言うならば、この少女は徳川の姫ということだ。

違う、そんなはずがないんだ。