奈落の果てで、笑った君を。





「…そうだったの?」


「…ああ」


「それならそうと最初から言ってくれればいいのにねえ」


「……俺はそういったものが得意ではない」



そういったもの?
それって、どういったもの?

尚晴と話していると、普段よりもずっとずっといろんなものに興味が湧く。



「……近いぞ」


「あっ、おせわに…、やっ、ちがう!ごめんなさい」



気づけば布団から飛び出して、傍らに座る尚晴へと身を乗り出してしまっていた。


だってわたしが見つめると、必ずちょっとだけ逸らすんだもん。

だから肩に手を置いてまで逸らされないようにしたの。



「…お前のような奴は初めてだ」


「“おまえ”じゃないよ、あすか!」


「……朱花」


「うんっ」



わたしが笑うと、この人は逆に眉を寄せる。

あすか、朱花。
今日からわたしは朱花。



「でも、みんなもっと長い名前だよ…?わたしは違うの?」


「…姓ということか」


「うん。たぶんそれ!」