奈落の果てで、笑った君を。





もう、走れそうにないの。

わたしと一緒に走っている尚晴ばかりを傷つけてしまってることが、耐えられそうにない。



「あのね?少し前に、手を繋いでるおじいちゃんとおばあちゃんを見たでしょ…?」



老夫婦だった。
ずっと寄り添ったふたりなのだろう。

髪の毛が白くなって、顔がしわくちゃになっても、お互い幸せそうに手を繋いで歩いていた。



「わたしは…、尚晴とあんなふうにはなれないもん」



どうしたって周りが先に消えてしまう。

それはわたしだけじゃなく、尚晴のことを傷つけてしまうんじゃないかって思った。


だからわたしは、ひとりで生きていくのがいちばんいい。



「このまま歳を取らないかもしれない。どこかで…止まっちゃうかもしれない」


「……だとすれば、逆の場合もあるんじゃないのか」



そう言われて、考えた。
もしかしたらあるかもしれない。

ここから普通に尚晴と同じような成長速度に変わるかもしれない。


でも、「…あるかなあ」と、最終的にはそこに落ちてしまった。


単純なことなの。

わたしは、尚晴と一緒に年老いていくことができないのが苦しいんだよ。