奈落の果てで、笑った君を。





立ち上がって、おれはまた進む。

魚の採り方は京に来る途中で出会った旅仲間に教えてもらったため、自信があった。



「くしゅっ!」



それにしてもやっぱり夜は冷え込むものだ。

夕暮れが過ぎてから水浴びをしたことが不正解だったのかもしれない。


火を起こしたとしても、今はもう消えてしまった。


毛布もなく、身体を温めてくれるものは江戸で譲ってもらったこの1枚の着物のみ。

だとしても牢のなかよりずっとずっと温かい。



「ん…?赤い月…?」



今日はいつも目にしていた月は出ていない夜だった。

けれど自分が身を置く先の河原に、ゆらゆらと揺れる丸い赤色が2つほど。


こちらに近づいてくる、月。


こんな色の月もあるんだ。

ここまで低い位置に輝いては動くものだったんだ。



「へへへ、なんや珍しいのがおるで」


「女とちがうか?こりゃあ楽しめそうやな」



もう少しで眠れるところだったのに。

どうにも月を持った人間らしく、パチッと目を完全に開いて起き上がる。