奈落の果てで、笑った君を。





誰を思い浮かべているんだろう。

わたしはリョーマが浮かんだよ。

あとは幕府のために今も戦っている、見廻組のみんなのこと。


せつない、切ない。
この世の中はすごく……苦しい。



「なのに───…、まだそんな顔で笑ってくれるのか」



尚晴と手を繋げることが嬉しいの。

桂に買ってもらった草履で走れることだって。


わたしにはたくさんの思い出があるんだって、振り返るたびに心が温かくなることだって。



「尚晴っ、信濃国へ行ったら何がしたい?」


「…まずは仲間たちに手紙を出したい」


「わたしも!」


「…そこで落ち着くまでは穏やかに暮らして、ぜんぶが落ち着いたら……みんなに会いに行こう」


「うんっ」



屯所に着物を取りに行かなくちゃ。

あの着物はわたしの宝物。
たくさんたくさん、宝物ができた。



「あっ、雪…!」



空からふわりと、白い雪が降ってくる。


どうして雪は白いの?
どうして冬は息も白くなるの?

わたしの普段どおりの質問に、まぶたを伏せながら優しい顔をした尚晴が、どこか桂にも見えた。