「悪い朱花。…せっかく布団で眠れたというのに」
「…わたし、こっちのほうがすき!」
尚晴をもっともっと近くに感じることができるから。
数年前に一緒に相模国へ行ったことを思い出すから。
そのときも今みたいに尚晴の腕のなか、壁や屋根がある場所よりも安心したんだよ。
「もう…町には出られなくなっちゃったね」
「…そうだな」
「ごめんなさい、尚晴」
「謝るな。きっと信濃国(しなののくに)まで行けば、だれも追っては来ない」
それにこれは俺が選んだんだ───と、わたしは何も悪くないと言ってくれる。
真夜中の冬空の下、小屋から遠く離れた場所にて、やっと一息つけた。
「俺の勝手で朱花を巻き込んだようなものだ」
「ちがうよ?尚晴もみんなも、わたしを守ってくれたの!」
一瞬、泣きそうに瞳を揺らせた尚晴。
ぎゅっと、すがるようにわたしを抱えた。
「友を裏切り、幕府をも敵に回して、お前を道連れにまでした弱い男だ俺は」



