奈落の果てで、笑った君を。





(母さん…、親不孝な息子で…すまない)



手紙も最近は忙しくて送れなかった。

仕送りもそれどころじゃなくて、できていなかった。


道場を継ぐという約束も、孫の顔を見せてやることも、俺はできそうにない。



(佐々木さん…、本当に申し訳ない)



必ず戻って来いと言われてたけど、それすら守れそうにないみたいだ。


俺、佐々木さんのこと、最初はあまり好きじゃなかった。

いつも穏やかな仏のように見せて、なんて心が冷たい人なんだろうって思ってたんだずっと。


でも……違ったね。


朱花が見廻組に加わってから、やっと、やっと、俺は見廻組の人間らしさを見ることができたんだ。

優しさを、温かさを、ときに残酷さを。

ああ人間なんだな俺たちも、って、思うことができた。



(朱花…、女の子に贈り物をしたことなんか…初めてだったよ俺)



下駄じゃなく走りやすい草履、だなんて。

買うときは少しだけ胸が痛かったけど、それでもお前は本当に嬉しそうにしてくれるから。


俺、あれ好きだった。

着物の懐に石や草を宝物のように入れてるの。

風車をふーっと吹いて、折り紙を折って、それだけで笑って。



(───…可愛かったなあ、いつも)



これは恋ではないことは確かだけど、愛ではあると思う。



「なにっ、おまえ…!ぐはあ……ッ!!」