奈落の果てで、笑った君を。





「んじゃあ俺は途中まで護衛に付き添うよ」


「早乃助。必ず戻ってくるんだよ」


「…はーい。心配しなくともふたりの邪魔なんかしませんって」



トンっと、みんなに背中を押されたような気がして。

地面をおもいっきり蹴る。
たおやかな風を切るように、走る。



「───尚晴っ、朱花…!」



震えていた、その声。



「…生き抜け…、生き抜け……!!!」



叫んだっていい、泣いたっていい、

ただ、走ることだけはやめるな───。


いつも只三郎が教えてくれた短歌のように、緩やかに力強く届いてくる。



「朱花っ、笑えーーーー!!!」



誰が誰の声かなんて、どうだっていい。

わたしは振り返って、満面の笑顔を見せた。




「おせわにっ、なりました……!!!」




ありがとう、みんな。

見廻組で過ごしたこと、ぜったいに忘れない。


わたしの人生のうちでいちばんの宝物だ。




「─────……頼んだよ、尚晴」




このあと訪れる戦いは、のちに鳥羽・伏見の戦いと呼ばれる。


しかし薩長含む新政府軍に対し、幕府側である旧幕府軍は大敗という結果が待ち受けていた。

多くの犠牲者を出したなかに、その名前は歴史に刻まれる。



佐々木 只三郎、桂 早乃助。



鳥羽・伏見の戦いにて、戦死───と。