奈落の果てで、笑った君を。





わたしたちだけが安全な場所へ逃げて、みんなは火のなかに向かっていくの…?



「尚晴。これは私との約束でしょう」


「…やく、そく…」


「朱花のことだけは、必ず守る…と」



尚晴の瞳は、揺れた。


迷いがあって、不安もあって、仲間を戦場に置いて行くことに対する恐怖と。

それと同じくらい、たったひとりでわたしを守れるのかという恐怖。



「ここに居ては結局はまた尾張藩が追ってくるのも時間の問題。それに薩長軍までいる。
このままではいつか幕府の弱みとして、朱花が利用されてしまうかもしれない」


「……これしか…、道は無いんですか…」


「尚晴、正しい選択をなさい」



けれど、只三郎はもう答えを分かっていた。

ここで断る尚晴なんか、尚晴じゃないこと。



「実はずっと前から、私がいなくなったあとの見廻組は君に任せようと思っていたんだ」


「え…、俺、ですか…?」


「それくらい君の実力を私は認めていました」



そこでも、只三郎だけじゃない思いが目にも浮かんだ。



「ですが幹部にしなかったのは……今日のためです」



この日に誰もが懸けていた。

いつか訪れる今日という日、わたしの手を引いて走るのは彼しかいないと。