奈落の果てで、笑った君を。





「…こんなことしかできないだなんて、ほんと皮肉だなあ」



彼は鯉にエサをあげたくてしているわけでは無さそうだった。

それくらいしかやることがないから、仕方なく。



「これでも一番組の組長だってのに、僕」


「戦わないの?」


「…戦えないんだ。こんなんだから土方さんにも追い払われちゃってさ」


「どうして?仲間なのに!」



病気だからだよ───、

チャポンッと、大きく跳ねた鯉の音に隠された気がしたけれど、そのあと聞こえた咳にまんまと暴かれてしまう。



「大人しく病で死んでいくなんて、僕がいちばん武士にはなれなかったな…」



あげ終わってしまった、鯉のエサ。

手持ちぶさたになってそっと池の縁に腰を下ろすと、青年も合わせるようにしゃがみこむ。



「たしか名前は……朱花、だっけ?」


「うんっ」


「僕は沖田 総司。新撰組で一等弱い男だよ」



本人は笑いながらそんなふうに言っていたけれど、尚晴も桂も沖田 総司のことを「冗談ばかりを言う天才剣士」と。

そう呼んでいた。