────その瞬間だった。
「………あ……」
ザシュッッ!!!
早乃助さんだけじゃないことを忘れていた。
ここは、ここには、いちばん恐れている男が居たことを。
いつも穏やかに微笑み、いつだって優しく、怒っているところなど見たこともなかった男が。
どうしてこの場に集められているのか。
それは、そんな男が与頭である存在からいちばん頼られ、信頼される、人斬りだからだ。
「…なに……しちゅー………が…」
それはもう全力で振り切られた。
誰が目にしても見事すぎる剣さばきだった。
今井 信郎に額を深く一文字に斬られた坂本 龍馬は、血しぶきを吹き出したまま仰向けに背中から倒れ落ちる。
俺は駆け寄ることもできず、ただ愕然と状況を見つめていた。
今井さん……、なにを…、なにをしているんだ。
「…忽那くん、今日のことは見なかったことにする。桂くんもいいね?」
「……わかりました」
「僕たちは佐々木さんに報告してこよう。店主がいつ目覚めるか分からないから、忽那くんもできるだけ早めにここを出るんだよ。
…行こう桂くん」



