これもまた叫び声を上げる余裕もなく、中岡 慎太郎と思われる男は床に身体を倒した。
「おぉい、なにしちゅーがぜよ中岡ぁ~」
ずいぶんと酒に酔っているらしい。
久しぶりに見た彼は、いまだに中岡がふざけていると勘違いしていた。
龍馬さん、逃げてくれ。
あなたはまだやり遂げていないことがたくさんあるだろう。
薩長同盟だって、大政奉還だって、あんたにとっては通り道のようなものだ。
「ん…?おい、誰やき…、中岡に何をしたが…?」
坂本 龍馬へと、中岡を斬った気持ちを持って刀を向けたのは早乃助さんだった。
斬るだろう。
この日がいちばん嫌だと言いながら、こんなにもあっさり中岡 慎太郎を暗殺してしまった男なんだ。
この人は確実に坂本 龍馬のことだって斬ることができる。
そこには俺と違って、彼に対する情というものが何ひとつとして無いから。
「───っ……!!」
ガキィィィィン!!!
その刃を、また別の刃で食い止めてしまったのは俺だった。
交えるべきではない刀同士が、なぜか交差している。
早乃助さんの開いた目と、俺の揺れる目。



