奈落の果てで、笑った君を。





「では、留守番を頼みました」



朱花の顔を見てしまったら、俺はきっと任務を遂行できない。

だからなるべく避け、夜を待った。


そして暗殺任務が下された6人で屯所を出ていく。



「だいぶ肌寒くなったなあ」


「そうだね。もう11月だなんて、嫌になるね」


「今日という日がいちばん嫌ですよ、俺は」


「…これも仕事だ。精いっぱい送ろう」



早乃助さんと今井さんの会話すら、俺の緊張を膨らませるだけだった。


人を斬ったことはある。

これでも俺とて刀を持って生きる武士である男だ。


その瞬間の血生臭さと感触は、慣れると言ってはおかしいが、それなりに味わってきた。


だとしても友を、穏やかな日を一瞬だとしても共に過ごした人間を斬ることだけは、経験がなかった。



「君たちふたりは入り口を囲って。中には今井、桂、忽那、私で行きましょう」



2階は明かりが灯っている。

外まで聞こえてくる大きな笑い声は、土佐の人間の特徴なのだろうか。


与頭の命令にコクリと合図を打って、俺たちは足音を消して近江屋へと忍び込んだ。