奈落の果てで、笑った君を。





「いつも尚晴にこうしてもらうの、すごくうれしい」


「……っ」


「あったかくて、きもちがよくて、安心するの」



ひとを喜ばせる言葉。
ひとを安心させる言葉。

悲しませる言葉、元気づける言葉。


言葉ひとつだけで、こんなにも意味があるものなんだって。


そしてそのなかでわたしがいま伝えるべき言葉がまだ分からないから、わたしはただ、ぎゅっと力を込めた。



「……あす…か…っ」



わたしが折った船をぐしゃっと握りしめた尚晴は、決してそれを潰したかったわけではなさそうだった。

むしろ大切にしたかったからこそ、彼は気持ちと一緒に握ったんだと。



「…これから見ることは、明日には忘れてくれるか」


「うん」


「…誰にも…言わないでくれるか」


「うん」



その瞬間だった。

痛いくらいに抱きしめ返してきたかと思えば、小さな子供が母親へとすがるように声を圧し殺しながら泣いた尚晴。