奈落の果てで、笑った君を。





そばに並んでいた地蔵。

その裏に男を寝かせ、朱花は俺の手を引いて何事も無かったかのように立った。


するとタタタタタッと追いかけてきた、数人の侍。



「すまない、そこの者たち。このあたりでボサッとした髪で土佐弁の男を見なかったか」


「あっ、その人なら見たよ!」


「なに!?まことか!?」


「うん!あっちの山奥のほうに逃げて行った!そのまま隣町にまで行くんだって!」


「そうか、感謝する!」



こんなにもサラッと嘘を言ってしまうことなど誰が教えたのか。

それか、早乃助さんあたりを真似ているのだろうか。


そんな朱花の物動じない姿に、地蔵の裏に隠れている男はすんなりと助けられた。



「どうやら追っ手は撒けたみたいですよ。
……龍馬さん」



そうなんだろう。

あんたが坂本 龍馬なんだろう。


自己紹介されるよりも言い当ててしまった俺を、地蔵からひょこっと覗かせた顔が見つめてくる。


てっきり目を真ん丸くさせているかと思っていたが、そうではなかった。