70年という歳月など未だに想像もできない。
想像できないからこそ、そんな場所に居たのかと苦しさだけは分かるのだ。
「これはおばさんのぶんっ!こっちはおじさんに!あと只三郎とノブちゃん!この短いのは桂でいっか!」
「ふっ、持ち帰るのか」
「うんっ」
朱花の懐は宝物入れだ。
ハツネとの切れなかった縁をやんわりとほどいてくれたのだって。
昨夜、朱花が眠ったあとに寝室を出てみれば。
居間に残っていた両親は「尚晴が選びたかった子は、朱花ちゃんだったのよ」と、納得したように話していた。
「あ!いちばん長いのは尚晴にあげる!」
徳川は、この笑顔を見ることすらしなかったのか。
少しでも目にしてしまえば非道なことなどできないはずだ。
「わっ!尚晴…?」
ススキに埋もれてしまいそうな少女を引き寄せるように抱きしめた。
俺がこうすると、朱花は腕のなかで笑う。
あまり笑うこと自体が得意ではない俺のぶんまで、満開の花を咲かせてくれる。



