奈落の果てで、笑った君を。





朱花のことだ。

自分が想う気持ちを理解はしても、相手が自分に向ける気持ちの細かな分析まではしていないだろう。



「尚晴?」



ここはしっかり伝えるべきなのではないか。


俺も同じ気持ちだと。

そして、いつか、……俺の嫁に。



「俺のために……毎日…、味噌汁を作ってくれても、…いい」


「毎日?つくる!」


「っ!本当か、なら俺たちは───」


「只三郎にもノブちゃんにも!桂にもっ!見廻組のみんなに!!」


「………」



こういうことなのだ。

遠回しでは駄目なことは分かっていたし、俺も伝えられるものなら伝えたい。



「いや、そうではなく。…俺の、ために、俺、だけの……ために」


「え?あっ、お魚さんも焼けてる!」



くるっと背中を向け、七輪の上で焼かれる魚をパタパタと扇ぐ朱花。

それを見ていた母親は長いため息。



「はあ~~~…、自分の息子ながらに情けないわ…」


「…悪かったな」



たぶん、先はまだ長いと。

そんな感じがした。