「尚晴っ、がんばれー!」
頬に口づけをし、額にも同じようにし、その上すべて忘れているなど都合が良すぎる。
聞いたとき、俺は自分で自分を斬り殺してしまいたくなった。
知らないあいだに朱花に初めてを与えてやっていたなど、誰が許せると言うんだ。
とりあえず俺は、この煮え切らない思いを木刀に込める。
「はっ、……あー、負けちゃったなー」
相手が木刀を振り下ろすより先に、俺の剣先はそいつの喉へ触れるギリギリ。
「勝者、忽那くん!」
「やった!やったあ!尚晴が勝ったよ只三郎っ」
「見事な剣さばきでしたね。早乃助も、また成長したのではないかな」
緊迫感が和らぐと、朱花は飛び跳ねるように俺の勝利を喜んだ。
「やっぱ若さには勝てないんですかねー。持久力で持ってかれた感もあったしさあ」
「いや、実力の差です」
「ほらこれ。たまには年上を敬って欲しいものだよまったく」



