奈落の果てで、笑った君を。

尚晴side




死にたい。消えたい。

できることなら時間を巻き戻したい。


どうして俺があんなことをしたのか、記憶が曖昧な部分に助けられている気がするとしても。

早乃助さんから容赦なく教えられた元旦のことは、その説明だけでも聞いていられなかった。


ただ、「70年も生きている」と自ら言われてしまった現実を、どうにかしてでも認めたくなかった俺がいたのかもしれない。


実感してしまったのかもしれない。

この少女は俺とは違う時間を生き、この先も違う世を見て行くんだろう…と。



「では両者、構えて」



年が明けて3日目。


書き初めや餅つきに初詣、去年よりも正月の行事という行事を隅々まで朱花に体験させ、本人は大満足のようだった。


そして今日は組員たちが居ないからこそ普段できない手合わせを、とのことで。

屯所内の道場にて、俺は木刀を手にした桂 早乃助と見合う。



「───はじめっ」



まだ少しだけ酒が抜けていないような気もする。

足場を崩してしまったところを、隙なく油断もなく突いてくる。