奈落の果てで、笑った君を。





わたしが言うことを聞くまで時間は取らなかった。

それは、調理場から届いていた香りが自分に近づいてきたから。


「おせちが完成したよ」と四角い箱を運んでくるノブちゃんと、新年初顔合わせの尚晴。



「わあ!これなあに!食べるっ」


「おいおいおい、まずは目で楽しまなくちゃ。そして情緒を感じてくれよまったく」


「ジョーチョ?」


「そ。これも正月にしか食べられないんだからさー」



赤いもの、黄色いもの、黒いもの、白いもの。

箱のなかにぎゅうぎゅう詰め。

たくさん詰まっているのに、ひとつひとつが丁寧に並んでいた。



「忽那くん、お酒は呑むかい?」


「…いえ。俺はあまり得意ではないので」


「え~、こういうときくらい呑めばいいってのに。相変わらず固いねえ」



お酒って、その瓶に入ってるやつ…?

なにか特別なことがあると男たちはいつも飲んでいて、それを飲んだときは決まってわたしに絡んでくる。