奈落の果てで、笑った君を。





しかし女の扱いだって俺よりは術(すべ)を持っているはずで、大人しく帰り路を歩いていることに違和感。



「だって饅頭、食いたいからさー」


「饅頭…」


「帰ったら奪い合いだろう?それ」



ケラケラと笑った視線の先、朱花が手にするひとつの土産。

まさか……花より団子、というものだろうか。



「ねえ朱花、それって誰へのお土産?もちろん俺だろう?
今日の俺の苦労ったら最初から最後まで凄まじいの、わかってるのかなクソガキは」


「みんなで分けよ?」


「うんうん。つまりは何等分になるのこれ」



ずいぶんと可愛がっている。

この男が朱花を見つめる眼差しは、単純にそんなものだった。



「…ふっ、変な情を持っているのはどっちですか」


「……さあ?」



朱花を拾ってきたばかりの頃、早乃助さんは俺に言ってきた。

手放すのは簡単だが、逆に変な情を持たれたら厄介だ───と。


情を抱き、手放せなくなっているのはどちらだろうか。


花街に来てまでその子が手にした饅頭を選ぶなど、そのときの早乃助さんに聞かせてやりたい。