「早乃助さん。とりあえず探しに───」
「なななっ、なんやてめェ!!斬られたいのか…!!」
近隣の部屋からだ。
男の怒号が聞こえた途端、俺も早乃助さんも表情を変えて飛び出した。
朱花だ。
それだけは分かっていた。
もし朱花がまた無礼な真似をしてしまい、誰かが抜刀でもしているとするならば。
それは逆効果だ、逆効果なんだ。
あの子は逆に笑って、刃に近づいてしまう。
「失礼する」
かけた一声など気持ち程度。
スパンッッと、遠慮なく床場だろう一室の襖を開ければ。
「はよ出てってやあ!!」
「なにしてるの?これから何するの?」
「邪魔すんなやガキ!!わしがこの日をどれだけ待ちわびた思てるんや…!!」
「あのね、もう秋だから着物は脱いだら寒いんだよ?」
まさに地獄絵図。
敷かれた布団の上にて、今から事を始めようとしている女郎がひとり、男がひとり。
……を、そばでしゃがんでじーっと見つめる男装少女がひとり。
「あいてっ」
とりあえずと言ったように、襖を開いた速度と同じ手早さで朱花の頭を叩いた早乃助さん。



