奈落の果てで、笑った君を。





あの人に教えてもらった言葉。

にこっと笑って、手を振る。


地面を蹴ると、足に小石が食い込んで痛みを感じた。


そんなことすら、そんなことすら、わたしは知らなかったのだ。



「わっ!うわあっ」



林を抜ける。

傾斜した地面を滑り落ちるように下って、すてんっと、草木のうえ。



「ふっ、あははっ!」



両手を広げて、見上げた暗闇。

真っ暗で何もなかった牢屋とは似ても似つかない解放感と気持ちがあった。


もうおれを縛るものなんか、なにもない。



「キラキラしてる!」



ひとつひとつが宝石のように瞬いては光を放つ欠片たち。

暗闇を照らしてくれる、丸い何か。


そういえばさっき、すれ違った町人は「今日は月が綺麗だなあ」と言っていたっけ。



「つき……、あれは、月!」



空気が美味しい。

誰も自分のことを卑しい目では見ない。


肌寒いと感じる風も、はあっと息を吐くとふわりと上る白い靄(もや)も。