奈落の果てで、笑った君を。





「…良かったんですか。あんな適当なこと言って」


「まー、新撰組には大迷惑だろうけど。でもあの場面で朱花と見廻組の両方を救う方法なんか、あれくらいしかないでしょ」



いつかこの男は新撰組に殺されるんじゃないか。

あの“鬼の副長”と異名を持っている土方 歳三に。いや、早乃助さんの場合は斎藤 一か。



「ここだね、標的が通ってる店ってのは」


「はい」



「加木屋」と表札のかかった店の前、今度はまた違う意味で気を引き締める。


この店に蕪木 弥彦という名の男が今日もやってくるという情報はすでに入っていた。

どこか静かになってしまった朱花を連れて、俺たちはさっそく草履を脱いだ。



「尚晴、ここは何をするところなの?」


「…美味しいものを食べたりする…ところだ」


「おいしいもの?でもノブちゃんのご飯がいちばん美味しいよ?」


「…そうだな。俺もそう思う」



純粋すぎるというのは、こういうときに痛い。

俺も慣れていないからこそ説明の仕方にすら戸惑う。