奈落の果てで、笑った君を。





俺も初めての場所だった。


遊郭という場所は、外から見ると明かりに溢れ、一見するときらびやかな町。

しかし蓋を開けてみれば闇が広がっている。

女たちは青空の下を歩くことはできない籠の鳥。


ここで生き、ここで死んでゆく。



「……朱花?」



しかし門をくぐってしばらく進むと、朱花は笑顔を消して足をピタリと止めた。



「どうして逃げないの?」



通りを飾る店先は“張見世(はりみせ)”と呼ばれ、格子の内側には女たちが座っている。

視線だけで男たちを妖艶に誘い、自分を選び、買ってもらうための場所。


そんなものをじっと見つめて問いかけた朱花は、とうとう格子に近づいたかと思えば───



「きゃあああーー!!」


「なにしてはるんどすっ、物騒やわあ…!」



両手で掴み、ガタガタと力強く揺らすものだから、張見世のなかの女たちは悲鳴をあげる。

ぎょっとしたのもつかの間、とうとう蹴り出す始末。


さすがに俺も早乃助さんも焦って、少女の身体を無理やりにでも離れさせた。