奈落の果てで、笑った君を。





「朱花、君は今日だけは男の子ですよ」


「うん!おれっ」


「…そう」



袴姿は家茂公の入京以来だった。

どんなことにも執着しない子だから尚更、本人はとくに気にはしていないようで。



「じゃ、行ってきまーす」


「みんなにお土産買ってくる!」


「朱花、お土産が売っているようなところではないぞ」



早乃助さん、朱花、俺。

順番に屯所の門をくぐったとき。



「万が一のときは任務ではなく、己を優先させなさい」



こんなことを言う人ではなかった、佐々木 只三郎という男は。

優しいようで冷酷。
仏のようで鬼。


それが見廻組与頭だったはずだ。


俺と早乃助さんはうなずいて、夕焼けの濃くなった町へ出た。



「ちょうちん!いっぱい!!」


「ほらほら、はしゃがないのー。ここで悪目立ちするのがいちばん最悪だから」


「わあっ!はやくっ、尚晴っ!桂!」


「はいもう首輪つけまーす。犬にしまーす。予想はできてたけど大変でーす」