奈落の果てで、笑った君を。





「ハッちゃん風車だよ!これね、吹くと回るの!」


「……知ってる」


「楽しいよねえっ」



ふーっと、ハッちゃんに見せながら息を吹きかける。

くるくると回った花びら。



「……負け……ました」



ぐしっと涙を拭ったハッちゃんは、噛み締めるように放った。



「朱花ちゃん、あなたの名前を教えてくれる…?」


「わたし?あすか!忽那 朱花っ」


「───…いい、名前ね」



それからハッちゃんは、わたしが差し出した宝物のなかから石を選ぶと。

後日から女中として屯所に来ることはなくなり、わたしはまた尚晴とのふたり部屋に戻った。



「ハッちゃん、どこに行っちゃったの?」


「…故郷に帰ったらしい」


「え、どうして?」


「もっと自分だけを見てくれて、自分だけを大切にしてくれる、頼りある新しい殿方を探すんだと」



説明してくれた尚晴は、悩みの雲が晴れたように柔らかい表情をしていた。


またどこかで会えるかなあ。
あの石、大切にしてくれるといいなあ。



「やっと今日から安心して眠れる…」


「え?」


「…いや。よし、じゃあ消すぞ」


「うんっ」



尚晴の部屋に並べた布団は、やっぱりこっちのほうがしっくりきた。