「いいかい?お役所勤めの人間ですら、どこまでも追いかけてくるの。どんなにどんなに逃げたって、ほんの少しの欠片を集めては追ってくる。
……それが将軍家だなんて…、あんた、殺されちゃうわよ」
「…どこに、いけばいい?」
「───…京の都に行きなさい。あそこは幕府に楯突く人間で溢れかえっているって噂よ。きっとそこなら、あんたも逃げ切れるでしょう」
すると女は「少ないけど」と言ってから、少しの銭貸を握らせてきた。
これは役に立つものらしい。
何も持っていない自分に持たせられた、お守りのようなものだと。
「あんたは愛嬌がある。だからきっと、素敵な人に出会えるはずさ」
「アイキョ?」
小首を傾けると、女はやれやれと頭を振って、そして微笑んだ。
「そーいうところよ」と言って、続ける。
「あたしの夫もね、…罪もないのに罪人扱いされて、結局は突き止められて死んだの」



