奈落の果てで、笑った君を。





「気になるのかい」


「っ!わ、うむっ!ひゃふひゃっ」


「はい静かにねー。今バレたら修羅場も修羅場すぎるから」



そしてまたもや背後から口を塞がれる。

わたしたちが見ていることには気づいていないようで、ボソボソと目先のふたりは会話を続けていた。



「桂、イイナズケってなに?」


「…夫婦(めおと)になる約束をしている男女ってところかなあ」


「メオト?それなに?」


「えー、そこからー?なんだろうねえ、んーっと、……あ。“俺のために毎日豆腐つくってくれや”みたいな関係だよ」


「え!それいいなあ!」


「静かに静かに」



メオトとは、毎日おとーふを作ってくれる関係だと。


わたしにもいつかそんな人が現れるのだろうか。

それは、誰もが手にしていいものなのだろうか。



「夫婦ってのはね、ずっと一緒にいるふたりってこと」


「…ずっと?」


「そう。死ぬまでずっと。いいや、死んだ先も…かな」



死ぬまで……。

いや、死んだ先もずっと一緒…。