奈落の果てで、笑った君を。





「どういうつもりだ。なぜここに来た」


「どうしても尚晴様のお傍に居たかったのです。ハツネはあなた様の許嫁ですから」


「…俺はまだそういった男ではないと言ったはずだろう」


「いいえ。ハツネは決めたのです。尚晴様は自分からは来てくれない、だったらハツネが行けばいいのだと」



屯所の裏、木の陰。

またある日のお散歩帰りにて、ちょうどふたりが話しているところを見つけてしまい、そっと眺めてみる。


イイナズケってなんだろう…。


ずっと気になっていたその意味が分かるかもしれない、と。



「尚晴様はズルいです。そんなにもハツネのことが嫌いなのなら、いっそのこと突き放してくださればよろしいじゃないですか!」


「……それは…」


「ハツネのこと、一応は女として見てくれているんでしょう…?だから断らない、違いますか…?」



口をつぐんでしまった尚晴。

日射しが逆に反射して、尚晴の顔がよく見えない。