奈落の果てで、笑った君を。





日が暮れる前に置いた脱け殻は、ちゃんと安全な場所にあった。

提灯の柔らかな明かりが照らす暗闇。



「すごいな、脱け殻だとは思わないくらい形が残っている」


「尚晴は怖くないの?」


「ああ。…むしろ、昔から虫が好きだったんだ」


「そうなんだ!」



あんなことがあったのに、わざわざ褒めてくれた。

手のひらに乗せて観察した尚晴は、満足したのか同じ場所に優しく戻す。



「また捕ってきてあげる!」


「…いいのか?ありがとう」


「うん!セミがいっぱい鳴いてる木を見つけたの!」


「待て、危ないから登ったりは駄目だ。そのときは俺も行こう」



そう言っているけれど、いつも誰かしらが一緒についてくるようになった。

いらないと言っても、最近は何かと物騒だからと只三郎も一点張り。


だから笑顔をひとつ見せれば、「本当に分かっているか?」と、尚晴はそれでも約束をこじつけてきた。


セミだけじゃない。

スズムシやコオロギ、夏に生きる虫の声がたくさん聞こえるなかで、わたしはまた笑った。