奈落の果てで、笑った君を。





「…大丈夫か」


「す、すみません…、急にっ、虫が…」


「かわいいよ?ほら、これ」


「こっ、来ないで…!!」


「……ごめんなさい」



ハッちゃんに渡そうと手にした贈り物は、ゆっくりと寂しそうに下ろす。

そんななか、ぽんっとわたしの肩に手を置いてきたのは桂だった。



「あのねえ、セミの脱け殻を平気で掴めちゃう女の子なんか朱花くらいだってば」


「どうして?動かないよ?」


「そーいうもんなの。どれどれ、おー、結構きれいに残ってたね」


「うんっ!…でもハッちゃんを怖がらせちゃったから……戻してあげる」



脱け殻だから意味を持たないものだとしても、わたしは中庭の草影にそっと置いてあげた。

誰にも踏まれないように、そっと。



「ハッちゃん、ごめんください」


「………」


「ごめんなさい、と言っている」



わたしに通訳ができた。

ハッちゃんを支えていた尚晴は、それから落ち着かせると身体の向きをわたしに戻した。