奈落の果てで、笑った君を。





わたしが着ているものとは違って、淡い模様が描かれたハッちゃんの着物。


最初に着ていた1枚と、この場所に来てから譲ってもらった男物の着物が1枚。

計2枚で生活しているわたしは、それだけで満足していた。



「水戸藩の旗本の娘なんだってよ」


「うわっ、御家人の俺たちは小さく見えるな…」


「なによりあんな身分ある可愛い子が許嫁だなんて、忽那が羨ましいぜ」



という声ばかりを聞く日常に変わって。


女中さんとして働くハッちゃんは、さっそくパタパタと主に調理場で忙しそうにしていた。


対するわたしといえば、晴れた日には外へお散歩に行って、雨の日には只三郎から短歌を教えてもらう。

たまにノブちゃんや桂とお話したり、尚晴と折り紙を折って遊んだり。



「朱花。お前もちったあハツネちゃんを見習えって」


「同い歳なんだろ?確かにお前はガキみてえだが、料理に洗濯、それくらいできてこそ女ってモンだぜ」


「いつも遊んでばっかでよー。俺だってお前みたいに生きてみてェなあ」