奈落の果てで、笑った君を。





なにが正しいんだ徳川幕府は。
なにをしていたんだ、70年も。

この子をずっと牢に閉じ込め、冷たい場所で寝かせ、硬い飯を食わせ。


それを─────…70年、だと。



「そろそろ帰るぞ。日が暮れてくる」


「尚晴、どうしてお日さまは暮れるの?」


「…時間があるからだ」


「どうして時間があるの?」


「……世は無常だからだ」


「ムジョウ?」



信じられるわけがない。

そんな話、誰だって信じたくはない。


それでも朱花を見廻組に置くことを決めた佐々木 只三郎の気持ちは。

たとえ幕府に楯突いたとしてもこの子を守ってやりたいと思った俺の想いは。


それだけは間違いなんかではないこと。



「どうして世はむじょ───、わっ」


「今日はここまでだ」



いっきに教えてしまったらつまらないだろう、と。

額を小突いて付け足した俺に、罪深き笑顔が花を開かせる。