奈落の果てで、笑った君を。





幹部でもない平隊士なんかの俺と話がしたい、だなんて初めてのことで、探りぎみに落ち着かない心をどうにか落ち着けていた。


なにかあったのだろうか。

警備のとき朱花をしっかり押さえつけることができなかったため、叱られるのだろうか。


しかし前にも、俺にだけ話しておきたい、なんて言われたような気がすることを思い出して。



『もしかして前に言いかけていたことですか…?』


『…前、とは。いつでしょうか』


『佐々木さんと朱花が初めて顔を合わせた日です。たしか…江戸で興味深い話を聞いた、と』


『…ふふ、やはり君は勘が鋭いですね。さすがだよ』



笑っているけれど、笑ってはいなかった。

それは彼が初めて朱花を前にしたときも同じ。


そのときから、もしかすると佐々木さんは朱花に何かを感じ取っていたのかもしれない。


このあと彼の口から知らされた、壮絶すぎる徳川の現実を。



「尚晴っ、この子ヒラヒラしてる!」


「それは蝶だ」


「チョウ!きれいだね!」