奈落の果てで、笑った君を。





サクラのおもちを楽しむわたしの隣、ふたりは今は見えていない額の汗を拭うように息を吐いた。



「でも、そんな奈落の果てでもやっぱり笑えるんだね。朱花は」



そっと伸びてきた桂の手が、ポンポンとわたしの頭を優しく叩く。

もぐもぐと咀嚼しながら首を傾げたわたしに、ふはっと楽しげに吹かせられた。



「あ、おかえりー。尚晴、とうとう佐々木さんに怒られた?」


「尚晴!これサクラのおもち!尚晴にも───…、あげる、よ…?」


「おー、こりゃまた大胆すぎー」



顔を伏せながら部屋に上がってきた彼に、気づけばぎゅうっと抱きしめられていた。

まだ尚晴の顔すら見ていないのに、その温かい腕に、考えていたことなんかぜんぶ吹き飛んでしまう。



「しょう、せー…?」



わたしを包み込む腕は震えていて、「っ、」と漏れた声は泣いているように聞こえた。


尚晴、泣いているの…?
かなしいの?くるしい?

どうして何も言わないの……?